そばカナダ
蕎麦レシピの色々
日本で今蕎麦と言ったら、殆どの人が「麺」としての「蕎麦切り」を思い浮かべる事でしょう。でも、「蕎麦切り」以外の食べ方を言って下さいと質問されたら、貴方は幾つくらいの料理を挙げられますか? 蕎麦掻きを挙げる事が出来たら、上出来でしょう。日本人にとっては、蕎麦切りが全てと言った状況ですが、世界で麺にして食べている人々は、ほんの一握りに過ぎないのです。 「そば」は、江戸の昔も「江戸患い」(脚気)に良いとの健康ブームで流行り出したのですが、今又高齢化社会を迎えた健康ブームで急速に脚光を浴びつつあります。そんな現在も未だ「そば」の真価が正当に評価されて居るとは思えません。特に日本では、昔からハレの日はもとより、日常を通じ人々の生活の中に根付き、育まれ確固とした蕎麦文化が形成発展されて来たのですが、余りに「蕎麦切り」が、高度で芸術的とも云える程に完成させられている為、その他のレシピには目が向き難かったのでしょう。でも、自称「蕎麦喰い」の日本人でも、本当に蕎麦を理解している人は、これ又一握りしか居ないように思えます。日本で一番蕎麦が食べられるのは、なんと暑い8月なのです。夏バテで食欲が無いから、軽くアッサリした冷たいざる蕎麦は、持って来いなのでしょう。でも江戸の昔、蕎麦は収穫の秋から、翌年の3月までの季節的食べ物だったそうです。と言うのは、現在の保存技術も設備も無い時代、蕎麦が採り立ての香りと味を保てるのが、未だ寒い精々3月までだと言う事を、知っていたからなのです。ましてや梅雨を越した暑い夏、一番品質の落ちた8月の蕎麦などは問題外だったのです。現代は蕎麦に限らず、何でも一年中出回るようになり、これはこれで嬉しく便利な事ではありますが、季節感が無くなり、又生産や保存等の仕方もマチマチで品質的なバラツキが多くなって、昔の「旬」の味と品質を探し出すのが、難しくなっているのも事実です。一度旬の時期に、本当の手打ち蕎麦を食べて、そばの味をInputしてみて下さい。そうすると、今までと違う食べ方になると思いますが・・・。
(ご参考:日本での「そば」の使用状況は、約半分が乾麺等の工業生産用に、約4割強が蕎麦屋等レストランで使われ、1割弱しか菓子やビールと言った蕎麦以外の用向きに使われていないとの事で来ましたが、近年は蕎麦屋での使用量が落ちて精々2割くらいになっているそうです。日本全国で蕎麦屋は、約3万軒強あるとの事ですが、その内「手打ち蕎麦」を看板にしている店が1割、3千軒にも満たないのです。またその内、玄蕎麦の買い付け、下処理/保管から自家製粉を経て手打ちに至る全過程をこなしている本物の手打ち蕎麦屋は、どんなに多く見積もっても更にその一割。全国で精々500軒。蕎麦の本場東京にも100軒とは無いのですから、本当の美味い蕎麦を食べるのも容易な事ではありません。ですから、本当に美味い蕎麦を食べたければ自分で作るのが一番確実で手っ取り早いのかも知れません。)
と言う訳でもないのですが、ここに「そば」を使った料理やお菓子等のレシピを順次紹介して行きたいと思います。
1)そばもやし
トップに出たのが、一番素朴なそばの若芽。只水をかけて10日程待つだけだから、レシピの中に加えるのも、やや憚られる気もしますが、この利用価値・実力は大したものなのです。使った種/丸抜きの約3倍のそばもやしが出来ます。
(用意するもの)
蕎麦の実、又は丸抜き(外皮を剥いたもの)、平たいバット、5mm程度の厚さのスポンジシート、又はキッチンペーパー。
(作り方)
@蕎麦の実を流水で良く洗い、一晩水に漬けて置く。但し、丸抜きの場合は不要。
Aバットにスポンジシート又はキッチンペーパーを敷き、水をヒタヒタに入れたら、蕎麦の実又は丸抜きを密度濃く蒔き、4〜5cmの高 さに成長するまでビニールシートか新聞紙で覆ってやる。
B約4日で根がスポンジシートを突き破って来るので、水を減らし、スポンジと水の間を少し空けてやる。水は二日に一回替える。
C10日もするとかなり育って来る。部屋のどこに置いても良いが、最後に窓際で陽に当てると瑞々しい緑色になる。10〜12cmぐらいに伸びた処で根を切ってサラダ等で食べる。余り成長させると、硬くなるので要注意。
そばつゆを掛けて、刻み海苔を振り、ワサビをチョット付けて食べる蕎麦屋流サラダは一寸トロットして美味いですよ。ルチンが多く、とても健康。
2)蕎麦掻き
最も簡単で素朴な蕎麦の味わい方。昔は只熱湯を注ぐだけの「椀掻き」だったのですが、今は火に掛けながら掻き回す「鍋掻き」がむら無く上手に出来る為、一般的になっています。
(作り方)
@30番〜40番の粗挽き粉 80gが一人前。(モット目の細かい蕎麦粉でも可)
A蕎麦粉を 2.4〜2.6倍の水でダマダマが無いように良く溶く。
B中火に掛けながらヘラで良く掻き回し、ネットリとして良い香りが立って来たらOK.。
Cお玉で掬い取って、蕎麦湯を入れた小鉢に盛り、ネギや、おろしにワサビと柚子の皮等をあしらって供する。
Dこれを土佐醤油(鰹節1を醤油10で合わせた万能汁)で食す。
蕎麦掻に黄粉と砂糖をまぶしたら伊吹団子が出来、おやつやデザートに良い。
3)練り蕎麦蒸し
簡単には甘くない蕎麦プディングとでも言いもしょうか、砂糖を加えればもうオヤツです
(用意するもの)
蕎麦粉 100g、 卵 3個、昆布出汁 3カップ、塩少々。 これで6〜7人分は出来ます。
(作り方)
@昆布出汁の中に蕎麦粉10gを入れ、弱火の上でダマダマにならないように良く掻き混ぜ軽く沸騰させる。
A水に漬けて、人肌に冷ます。
B残りの蕎麦粉90gと卵3個を加え、良く掻き混ぜ、塩を少々振り味を調える。
Cこれを裏漉ししてから、流し箱に流し込んで、蒸し器で約15分ほど弱/中火で蒸す。
Dお好みのサイズと形に切り、そばつゆを少々廻してから、ネギや山椒の葉等をあしらって食べる。
E夏場は、冷やして、冬場は暖かにして供すると良いでしょう。
サトイモの様な懐かしい食感で、酒も進みます。
4) 蕎麦豆腐
(用意するもの)
蕎麦粉 100g、丸抜き 50g(事前に醤油と砂糖を入れたお湯で15分程茹でて味を付けて置く)、鰹出汁 800cc、葛粉 35g、醤油、ミリンと酒をお好みで。
(作り方)
@蕎麦粉と味付けした丸抜きを、ボールの出汁に入れて良く掻き回す。
Aこれをフライパンか浅い鍋に入れ中火に掛けながら、粘りが出るまで一生懸命に掻き回す。(だから蕎麦掻きと言うのです。)焦げ付かせぬ事が重要です。
B醤油、ミリンと酒を加える。
C100ccの水で溶いた葛粉を加える。
Dこれを流し箱に流し込み、熱を取ってから、冷蔵庫に一晩寝かして出来上がり。
E適当な大きさに切り、好みの薬味を添えて食す。蕎麦の甘い風味が味わえます。
5)蕎麦味噌
(用意するもの)
味噌 300g (もし手に入れば江戸甘味噌を使う。色は濃いのですが、塩分は普通の味噌の半分、米麹は倍も入っている江戸の伝統的な甘味噌だから通常冷蔵庫で4ヶ月程度と日持ちはしませんが、プロの料理人の秘密の隠し味として使われています。手に入らぬ場合は、甘汁の量を倍にして普通の味噌を使う。)、砂糖 50g、甘汁 60g(暖かな種物用に使う出汁成分の多い軽い汁)、丸抜き
50g、白胡麻30g、蜂蜜 大さじ2杯、ミリンと赤唐辛子を少々。
(作り方)
@鍋に味噌と砂糖と甘汁を入れて、中火に掛け良く掻き回す。
A炒った丸抜きと白胡麻その他の材料を入れ更に掻き混ぜ続け、ネットリと艶が出て来たら出来上がり。焦がさない事が肝心。
これで酒をチビチビとやる。田楽味噌として万能。蕎麦屋と酒は江戸の昔から切っても切れないものだった。蕎麦屋と鰻屋には、何時も最高の酒があり、蕎麦や鰻を待つ間、蕎麦味噌や漬物等をお供にユックリと飲んだものです。蕎麦屋では、酒を特に上酒と呼んだ。
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